『名も無き世界のエンドロール』 読んだ
今週のお題「読書感想文」
ちょうどいいタイミングで本を1冊読み終わったので、プチ読書感想文を書いてみた。
今回は、行成薫さんの『名も無き世界のエンドロール』を読んだ。
ごくごく簡単にあらすじを説明すると、腐れ縁の幼馴染である、ドッキリを仕掛けるのが大好きなマコトと図体は大きい癖してビビりな主人公キダが、世紀の大計画「プロポーズ大作戦」を決行するお話だ。
最初はあまり読みやすくはないな~と思っていたが、パズルのピースをはめていくように伏線がどんどん回収されていき、気付けばページを捲る手が止められなくなっていた。
読みやすくないと感じた理由は、時系列が頻繁に入れ替わり、断片的な記憶が語られていく構成になっているからだ。しかも複数の時系列がかなりバラバラに飛ぶので、分かりにくいと感じる人も多いと思う。
しかし、読了後の今は、この配置は意図的だったんだろうなと感じる。「プロポーズ大作戦」の内容を理解した時のちょっと鳥肌が立つ感覚は、この分かりにくい構成でないとおそらく味わえない。
私が1番良いと思ったのは、セリフだ。特に好きなものが、キダの
「そんなことはない。けど、違うんだよ。野球は好きだし、みんないいやつだけど、俺は少しだけズレたところにいて、みんなが作る世界を、近くて遠いところから見ている」(p137)
というセリフだ。とてもわかる。私はこの本の登場人物たちと違って家庭環境に困ったことはないが、人間らしい情がないのでは?と思うことは割とある。
どうしても客観的な視点から抜け出せず、時には自分のことさえも他人事のように感じてしまう経験があるから、このキダの言葉には覚えがあり、胸がズキリとした。共感よりは、痛いところを突かれたという気持ちの方が勝ったかもしれない。
こんなことを言うと失礼すぎるが、心をかなり許している友人以外に対しては、話をしてもどこか上の空というか、自分ではない誰かが前に出てきているというか、まさに「近くて遠いところから見ている」感覚になる。
このような、ありそうでない、キャッチーなセリフの言葉選びが良かった。
「一日あれば、世界は変わるんだよ」というセリフは、この本を象徴するものだと思っているけれど、これもありそうでなくて、パンチが強くて、印象的だった。
勘がいい人は、途中で何となく展開の察しがついてしまうかもしれない。ただ、それでも作戦決行のシーンはワクワクしたし、驚くこともあったし、切ない気持ちにもなった。読んでみて損はしないと、個人的には思う。
ちなみに、この本は今度映画化されるらしい。真剣佑がマコトなのか。「プロポーズ大作戦」でどんな表情をするのか気になる。観に行きたくなった。
あと、映画「レオン」を観ようと思った。